力に関わる創作パラドックス2  

(2014年9月13日
修正23日)


  

(1.遠心力のパラドックス

室伏選手2003年にハンマー投げで84.86mの世界歴代5位の記録を出した。このとき室伏選手がハンマー・ケーブルを手放す直前ではハンマーの周速度は29m/sであり、両腕で約3000Nの力で引っ張っている(向心力)。この力に釣り合っている力は遠心力(慣性力)である。

ハンマーには向心力と遠心力が掛かっているが合計の力はゼロである。つまり、力が加わっていないのと同じである。ハンマーは秒速29mがあるので、ニュートンの運動の第一法則によれば直線等速運動を続ける筈である。しかし、ハンマーは室伏選手が手を離すまで円運動を続けている。

(参考)
  ニュートンの運動の第一法則(慣性の法則): 物体が静止を含み何らかの運動の状態にあって、その物体に何も力が加わっていなければ、その物体は等速直線運動を続ける。

上述の遠心力のパラドックスが間違っていることは実際を見れば誰でも判る。では、そのパラドックスの説明のどこがおかしいのであろうか。


(回答)
  室伏選手は周回するハンマーの速度に対して直角方向に力を加えているのであるから慣性の法則の前提が成立していないのである。この力により周速とは直角方向に加速度を生じているのである。従って、直線運動を続けることは出来ないということである。ケーブルの方向に加速度を生じているので反対方向に慣性力が働く。この慣性力と向心力が釣り合っている。


(2.地面反力のパラドックス

あなたの体質量は60Kgであるとする。地面に立っていると地球の重力により足の裏には600Nの力が掛かる。この地面から受ける力は体重600Nと釣り合っていて、地面に対して静止していられる。

あなたが地面に対して静止しているということは速度も加速度もゼロということである。ニュートンの運動の第2法則によると力は加速度に質量を乗じたものである。地面に立っているあなたは加速度がゼロなので重力に起因する力もゼロの筈である。しかし、地面から600Nの力を受けている。

さて、地面反力は誰もが経験することなのでパラドックスであるという人もいないだろう。ではどこが間違っているのだろうか。


(回答)(修正)
このパラドックスの間違いは、地表で静止していると速度はゼロで加速もしていませんが、加速度はゼロではないという点です。パラドックスにもならないという方もおられるでしょう。

 (了)

(後記)
(1.遠心力のパラドックス)の要点は、慣性の法則での条件(力が何もかかっていないとき)の力は慣性力を含まない。従って、室伏選手の振り回すハンマーには力がかかっていない。このこともあって、慣性力を見かけの力とする書籍も多いが、外力と釣り合う慣性力は実証できる実際の力である。

(2.地面反力のパラドックス)は、どうしたわけか(回答)が間違えている。加速度もゼロである。このパラドックスは加速度で定義する力(の単位)が不適切な理由の一つなのである。


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