力の三要素は間違い  

(2019年1月12日)


 中学や高校では力の3要素という言葉を教えるらしい。しかし、これは良くない。むしろ間違っている。

 デジタル大辞泉の解説には次のように書かれている。

ちから‐の‐さんようそ[−サンエウソ] 【力の三要素】
 物体に与える力を定義する三つの要素。すなわち、力の大きさ、力の方向、力の作用点を指す。

 この記述はベクトルの三要素に他ならない。力はベクトルとして扱っても多くの場合で間に合うということに過ぎない。ベクトルとして扱うことに非があるのでない。力の三要素として作用点は説明なしに使ってはいけない。

 質点系力学では物体を質量だけある点とみなすので力もその点に働くと仮定する。運動解析はこのような仮定でも間に合う。真の力は点で作用することは出来ないことを忘れてはならない。

 力は点でも作用できないし、線でも作用できない。点で作用させるとは物体にキリや針で力を入れるようなものであり、ずぶずぶと刺さってしまう。キリとキリの先端同士を合わせて力を入れることなど出来ないことである。線で作用させるとは物体に刀や包丁で押すことであり物体は切れてしまう。

  

 力は必ず面で作用する。面で無ければ作用させられない。力は圧力として作用するものである。力の大きさはこの圧力が加わる面積とその圧力を乗じた量である。物体に力が作用するときは物体の表面に圧力として作用するとその物体内部には圧縮応力として伝わり、ひずみを生じる。力には圧縮だけでなく、引き張り、せん断があるが、引き張りとせん断は物体内部で生じるものであり、物体に作用する元は必ず圧縮である。

 圧力として力が物体に作用するということは作用する側の分子・原子の集団が対象の物体の原子・分子の集団に衝突してその物体に応力・ひずみを生じさせるのである。ミクロに見れば電磁気力相互作用である。自然界には4種の相互作用があるとされる。電磁気力相互作用の他は、重力相互作用、強い相互作用、弱い相互作用である。後の2作用は原子内部の作用である。

 力の大きさの単位はN(ニュートン)で、圧力の大きさの単位はPa(パスカル)である。現在は、1Paは1m2あたり1Nの力と定められているが、逆に、1Nの力は1Paの圧力が1m2の面積に作用したときの合力であるとすべきである。

 従って、圧力は別に定めなければならない。例えば、「1モルの気体(例えば、水素)が1m3の空間に閉じ込められて温度0度Cの時に示す圧力を2270Paとする」で良いだろう。

(了)


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