独立事象と信頼度

(平成21年6月6日)

 独立な事象の確率は乗法が利きます。つまり掛け算ができるのです。
事象Aが起きる確率をP(A)で表し、事象Bが起きる確率をP(B)で表したとき、事象Aと事象Bが独立であるならば、AとBが同時に起きる確率P(A・B)はP(A)・P(B)です。数学の確率理論では確率の公理から導けます。

 確率の応用で乗法が利くことは非常に多く使われています。その中でも信頼度計算では中枢をなすものです。信頼度とはアイテム(品目)が、所定の環境下で、所定の期間、所定の性能を発揮する確率をいいます。簡単に言うと信頼度とは品目の成功確率です。

 システムの信頼度はシステムを構成するサブシステムの信頼度の積として計算されます。サブシステムの信頼度はサブシステムを構成するコンポーネントの信頼度の積として計算されます。コンポーネントの信頼度はそのコンポーネントを構成する部品の信頼度の積として計算されます。部品の信頼度は試験で確認します。

 システムの信頼度が十分高いためには、部品の信頼度が高いことが必要です。システムを何セットも試験することは費用が高くつきますから、部品のレベルで多くの試験をして確認することになります。大筋でこのような論理でシステムの開発は行われます。非常に大雑把に言っての話ですが。

 実際に、部品の信頼度が試験の結果だけで判断するならば、ラプラスの継起則が示すように、必要とする信頼度を得るために、極めて多数の試験を行わなければならないだでしょう。部品といえどもそこまで試験することはありません。

 また、独立な事象であるときに成り立つ式であるが、同じ工程、同じ材料、同じ人が製造した部品が相互に独立ではないのだが、この点が無視されていることが多いのです。むしろ品質管理を徹底して同じものを作ろう努力していますから、信頼度計算の前提が成り立たないように努力しているとも言えます。

 信頼性工学の最も基礎概念であるべき信頼度も実際にどのような数値になるかを決めることにおいて疑問の余地が多いのが現状です。暗黙の内に確率の定義に頻度概念が採用されていることも見直すべき事項です。

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