ヒートポンプは永久機関か?

(2011年3月24日改)


  第2種永久機関とはエネルギー保存則に反することなく、一つの熱源からエネルギーを得て永久に動く機関である。熱力学の第2法則は、残念ながら第2種永久機関も存在し得ないことを言っている。通常の熱機関は、一般的に言えば、高温の熱源から低温の熱源に自然に熱が移動する性質を利用したものである。

 最近、省エネ技術として持てはやされているのがヒートポンプである。この技術を使った省エネ・高効率な給湯システムはエコキュートという名前で呼ばれている。どのぐらい高効率かを示す用語は成績係数(COP)と呼ばれ、最高のものは6以上であることを誇っている。

 性能係数が6であるという意味は、1の電気エネルギでポンプを動かし、外気の熱エネルギーを利用することによてって6のエネルギーを利用できるということである。外気が5度Cの冬場であっても、部屋を20度以上に暖めることが出来るというものである。たとえば、次のURLもそのようなことが書かれている。http://automoney.sakura.ne.jp/lohas/350/ent678.html

 ところで、1の電気エネルギーは発電に使う熱エネルギー2.5が必要である。それでもヒートポンプは2.5の熱エネルギーを利用して6の熱エネルギーを作っていることになる。そこで、得られた6のエネルギーから3の部分を発電に回してポンプを回したらどうであろうか。外部からの1の電気エネルギーを利用することなく3のエネルギーが得られることになる。温度差がそれほどなくても動くスターリング・エンジンというものもあるから不可能ではないだろう。これは事実上無尽蔵に利用できる外気のエネルギーを利用しているとは言え、実質的に第2種永久機関が可能であることを示しているのであろうか。

 (回答1)実現できる。
 大きく見ると外気を暖めているのは太陽エネルギーであり、太陽電池が劣化さえしなければ永久に電気エネルギーを得られるのと同じで、擬似的な第2種永久機関であると考えてよい。

 (回答2)実現できない。
 このエコキュートを使った家を遠くから眺めると、5度Cの外気を熱源として、部屋の中を20どCに他からのエネルギーを導入せずに暖めていることになる。熱は高温から低温に流れる自然法則に反することになるから実現できない。つまり、温度差が少なくても動くスターリングエンジンの効率は非常に悪いので、この効率を加味して計算すると、6のエネルギー全部を使っても電気エネルギー1が発生できない。

 (回答3)どちらでもない。
 現在の技術レベルではCOPが6程度しか実現できていないが、将来の技術革新によりCOPが10程度まで性能向上が実現できれば、擬似的第2種永久機関も実現できる。

 皆さんはどの回答が正しいと思われるでしょうか。

(了)

 (追加1) 残念ながら、ヒートポンプも胡散臭い話がつきまとっているようです。
http://www.isep.or.jp/images/press/isep_press_100820.pdf

(注)
COP: Coefficient Of Performance 成績係数(動作係数ともいう)


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