人工衛星は不安定な釣り合い?
 

(2014年2月1日)


 現在のニュートン力学では重力を力であると説明しています。しかし、重力が力であるという認識は間違っています。もし、重力が力であると天文学の一大事になりかねません。

 今、地球を円軌道で周回している人工衛星を考えます。この人工衛星に働く重力と遠心力が釣り合っていると考えるのがニュートン力学です。実際、この釣り合いの条件から人工衛星の速度と軌道高度の関係が導けます。

記号を次のように決めましょう。

m:人工衛星の質量
M:地球の質量
G:万有引力定数
r:地球の中心から人工衛星までの距離

F(遠心力):人工衛星に働く遠心力  =mv^2/r

F(重力):人工衛星に働く重力 =mMG/r^2

すると、F(遠心力)=F(重力)の力の釣り合いの条件から、
 
mv^2/r=mMG/r^2

両辺に同じ人工衛星の質量がかかっています。人工衛星の質量は円軌道の高度と速度の関係に無関係であることが判ります。

つまり、v^2=MG/r という関係があることが判ります。

人工衛星の高度を地球表面からの距離Hで表すとr=H+6378Kmです。MとGの定数を入れて計算する式がJAXAのHPに準備されています。高度と速度の関係式です。

http://iss.jaxa.jp/shuttle/flight/sts99/earthkam_01_2.html

実際に上の説明のように、重力と遠心力が釣り合っているのでしょうか。もし、地球を回る人工衛星が力と力の釣り合い状態にあるのなら、おかしなことになります。それはこのつり合いが安定な釣り合いでなく、不安定な釣り合いだからです。

遠心力は地球からの距離に逆比例していますが、重力はその距離の二乗に逆比例しています。もし、rが少し増えてしまうと、遠心力のほうが重力より大きくなり、ますます人工衛星は遠ざかることになります。

逆に、rが少し減少しますと、遠心力より重力が大きくなり人工衛星はどんどん地球に近づくでしょう。

人工衛星と地球の関係ならば、あまり問題にならないかもしれませんが、太陽と地球の関係で考えると恐ろしいことになります。地球は太陽からどんどん遠ざかるか、太陽に落ち込んでしまうことになってしまうからです。

それでは、実際はどういう事なのでしょうか。

人工衛星は常に地球の重力で落ちています。落ちているのは力を受けているからではなく、地球の方向に加速度的に運動する自然の性質なのです。

人工衛星は水平方向に秒速8Km近くの速度があるので、常に地球に落ちていても、地球は丸いので、いつまでも地表に届かないのです。

アインシュタインが最初に気が付いたことですが、自由落下している物体には重力が消えています。つまり力は何も働いていません。人工衛星も自由落下の状態にあることは変わりませんから、重力加速度の大きさと人工衛星の速度だけの関係であって、安定・不安定という力の釣り合い問題には無関係なのです。

さて、ニュートン力学では軌道を回る衛星は不安定な状態にあるという上記の説明は落ちがあります。衛星が何らかの影響でrが増したとすると、速度が必ず減少します。それは角運動量保存則が厳然とあるからです。角運動量PはP=mrvですから、遠心力はrの3乗に逆比例するのです。

rに逆比例するのでなくrの3乗に逆比例するので、軌道は安定であることが判ります。

(了)


(後記)
 円軌道を回る衛星は遠心力と重力の釣り合いとするならば、数式の形から一見不安定な釣り合いのようにみえる、というのが発想でした。

 しかし、力でなく加速度の釣り合い式でも同じことが言えます。

 結局、円軌道から少しでも外れる位置または速度なら軌道は円から楕円になります。楕円軌道は円地点で遠心力(加速度)が重力(加速度)より 小さいので軌道として安定しています。

 本文は説明不足でした。

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