自発的対称性の破れについて  

(2013年9月4日)


 東京大学の柳田勉教授は「自発的対称性の破れと素粒子物理学」(下のURL)の中で最初の節に次のように書かれている。

 「自発的対称性の破れはわれわれの日常生活の中にでも見られる現象のひとつである。たとえば,ここに丸いテーブルがあると考えてみる。テーブルの表面にはその面に垂直な方向に一様な重力がかかっているとする。そのテーブルの中心に1本の細長い棒を垂直に立てておく。この考えているテーブルの表面での力学系は,テーブルの回転に対する対称性をもち,何も特別な方向はない。しかし,この棒が立っている状態は安定な状態ではない。時間がたつとその棒は倒れてしまう。棒が倒れた状態では特別な方向が発生し,もはや上記の回転対称性は破れている。このように,力学の基本方程式は対称性をもつのに,そこに生じた基底状態の対称性が破れる現象を,自発的対称性の破れという。」

http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/40/4/features/03.html


 このテーブルと1本の棒の例えは、この柳田教授のオリジナルではなく、英文の解説にも出てくるものである。しかし、棒が倒れることによって対称性が破れて非対称性になったとするのはうなづけない。棒は最初から非対称であって、単に非対称性が不安定な状態におかれていたため拡大しただけではないか。およそ、人間の感知できる大きさの次元の世界で完全な対称性を有するものは考えられない。棒を倒したきっかけが仮に空気分子の運動であるならば、空気分子の衝突が対象であるはずがない。

 物理学者への注文は、自発的対称性の破れをもっと納得のいく例で説明して貰いたいものである。数式を使わないと無理なのだろうか。

(了)


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