条件付き確率

(平成21年6月6日)

 確かさの度合いが確率ですが、何の確かさかは明示されていません。実世界の確率は常に付きまとっている暗黙の条件があります。例えば、今「さいころを振って1の目が出る」ということを考えるとき、本当は6面体の正しく作られたさいころであるとかの暗黙の条件があることが判ります。この暗黙の条件があることを明示するために、一括して条件Hの元にという表現をします。

 命題A:1の目が出る。
 条件H:正しく作られた6面体のさいころを正しく振る(常識で考えられる限りの癖の無い方法で)

 命題Aが眞である確かさ、つまり確率を次のように表示します。
   P(A|H)

 縦のバーの右に書かれた条件の下にAが眞である確率を意味します。これを条件付確率と呼びます。実世界の確率はすべて何らかの条件付き確率です。

 条件付き確率の定義は命題Bが眞であるという条件の下に命題Aが眞である確率として、次のように定義します。
     P(A|B)=P(A∩B)/P(B)
この式も、本当は隠れた暗黙の条件があるので、P(A|BH)と書くほうが親切です。

 高校の数学で習う確率はラプラス流確率の定義であり、コルモゴロフの公理を満たすもので、これらは条件無し確率の表示で済ませています。実世界の場合の問題であるならば常に仮説Hが省略されているのです。条件無し確率を絶対確率と呼ぶこともあります。

 A∩Bは命題Aと命題Bの共通部分、または両方が眞である部分を指します。A・B(=AB)とも書きます。

 P(A|B)=P(A∩B)/P(B)=P(A・B)/P(B)
従って、
 P(AB)=P(B)P(A|B)

仮説Hの元での式であることを明示するならば、
 P(AB|H)=P(B|H)P(A|BH)

これらの式は、確率の積の規則に他なりません。

 ここで条件付き確率の定義式から積の規則が得られたわけですが、拡張論理の確率理論では、条件付き確率を定義するまでもなく、合理的な推論の帰結として積の規則も得られます。

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