(2018年12月21日) 人は力が何も作用していない物体が静止または等速直線運動を続けるとして疑わない。しかし、力が何も作用していない物体が加速度運動をしているとは信じられない。・・・・・原 月や人工衛星は地球を周回しているから等速直線運動ではない。高いところから物体を落とすと真下に落ちるが速度がどんどん早くなるから等速ではない。地表に建つビルも静止しているようだが地球は自転しているから地表と共に動いている。 考えて見ると静止又は等速直線運動をしているものは何もないことに気がつく。近似的に静止又は等速直線運動をしていると見ることができるだけである。世の中の物体はすべて何らかの加速度運動をしていると言った方が正しい。 すると、すべての物体は常に何らかの力を受けていると言わねばならないのだろうか。地表上に静止している物体は自身の重さと地上からの反力で釣り合っているから確かに力を受けている。レールの上を走る列車も、大気の中を飛ぶ航空機も常に力を受けていることに違いはない。 国際宇宙ステーションの中はどうであろうか。国際宇宙ステーションは地球を周回しているので加速度運動をしていることに違いはない。水平方向の速度があるだけで自由落下に変わりはない。すると、加速度運動であるから常に力が働いていることになる。 ニュートン力学では地球を周回する国際宇宙ステーションが無重力状態になっているのは重力と慣性力が釣り合っているからだという説明をしてきた。つまり重力という力が働いているから加速度運動をしているのだと。 ところが1907年にアインシュタインは「自由落下している物体には重力が消えている」ことに気がついた。すべての星から遠く離れた空間に置かれた物体と同じ状態にあるというのである。つまり、このような空間にある物体には何も力が働いていない。 アインシュタインが気がついたことは自由落下中の物体は加速度運動をしているにも関わらず何も力が働いていないということである。アインシュタインは自身が言うところのこの生涯最高の思い付きに力を得て一般相対性理論を確立した。 力が何も作用していない物体は静止または等速直線運動を続けるというのはニュートンの運動の第一法則である。これは慣性の法則とも呼ばれている。 世の中に厳密に慣性の法則に従っているものは何もないにも関わらずこの法則が正しいと信じられていることはおかしなことである。アインシュタインは自由落下こそ慣性運動であると考えたのである。 ニュートンの運動の第二法則は質量mの物体に力Fを加えると物体は加速度αの運動をする。そのときF=mαの関係があるというものである。F=mαは運動方程式とも呼ばれ、ニュートン力学の中心をなす式である。 加速度運動があるところには必ず力が作用していると考えられたのは、この運動方程式が実績のある不動のものであるからに違いない。 加速度運動であっても力が何も働いていない場合があることが信じられい理由は、ニュートン力学が大きな成功を収めたからであろう。現在でも工学分野ではニュートン力学で間に合っているという人は多い。 大きな成功が周辺の真実を隠してしまった例であろう。ニュートン力学で間に合ってはいても自然を説明する理論としては間違っている。 ニュートンの万有引力の式は力の式になっている。これはケプラーの3法則から導くときに加速度の項を力/質量で置き換えているからである。しかし、重力という力はなかったのだから万有引力という力は大自然に無かったのである。ニュートンは3法則をまとめるとき加速度の式に留めるべきだったのである。(注1) 「大きな成功が真実を隠す」というのは事故調査に似たようなことが言える。「あまりにも確かな事故原因がより重要な事故原因を隠してしまう」というものである。 Nロケット5号機で打ち上げられた静止衛星「あやめ」は衛星搭載のアポジモータ点火後約10秒で電波が途絶した。アポジモータの異常燃焼が起こったことに間違いなかった。 事故原因を調査するとロケットの3段から衛星を分離した後、3段モータの残推力で分離した衛星に追いつき再接触したことが明確になった。衛星は点火時に姿勢がおかしかったものの姿勢を修正して点火したところ爆燃してしまった。 3段モータの追突があまりにも明らかだったため、アポジモータの運用方法に問題があったことに気がつかなかったのである。このためNロケット6号機による「あやめ2号」も殆ど同じ運命をたどってしまった。 航空機の事故調査で1986年に起こった日航機JAL123号の御巣鷹山墜落事故である。圧力隔壁の修理ミスがあったことはあまりにも明らかである。それでも真の原因は他にあるのではないかとの疑いを投げかける本が未だに発行されている。 (注1)ニュートンは天下りに逆二乗法則として万有引力の式を示し、この式でケプラーの3法則が導けることを示したと説明している本もある。 (了) 戻る
|