(2019年3月10日) ある作家が感度的な小説を書いたとする。するとその作家は人の心を動かす力があると評価される。他人の心を動かす力があるとされる。このように力とは動かずという概念で広く使われている言葉である。 もともと、力とは物理的な概念で使われていた用語である。国語の辞書を開いてみれば、物理用語として力は二つの作用を起こすとしている。物体に力が作用すると、一つはその物体に加速度運動を生じさせ、そして二つ目として、その物体に応力・ひずみが生じる。 力の大きさの単位はN(ニュートン)が国際度量衡委員会でSI単位の一つとして定められている。質量1kg(キログラム)の物体に作用したとき1m/s2の加速度を生じる力が1Nである。 この力の大きさ1Nはあくまでも単位の定義であるが力の定義でもあるとみなされがちである。力と運動の関係から力を定義するならば不適切と言わざるを得ない。 「暖簾に腕押し、ぬかに釘」ということわざがある。反力が生じない相手には力が入らないことを言っている。力を作用させると反力を受けて、殆どの場合、静止している。四つに組んだ力士が動かなくても力は出ているのである。建造物は大きな重量を基礎が支えている。力は釣り合い状態にあり静止していることの方が多いのである。 実際、力の単位が加速度に言及しているのに反し、力を測定するときに加速度を測ることはまずない。通常の力センサーは、殆どの場合、バネの変位(またはひずみゲージ)で計っている。力の定義をある物質に加えたときのひずみの大きさで定義する方が実態に近かったのである。もし、このように力を定義していたならば、力の単位1Nは正確な力センサーを作って基準器としたであろう。 一方、運動や応力・ひずみを知ることは力を受けた物体の状態変化に着目していることであって、力そのものは何かを説明しているわけではない。力を定義するためには力自体がどのようなものかについて定義した方が自然であろう。 そこで力が物体に作用するということを考えて見る。物体を構成している分子・原子の集団に、別の分子・原子の集団が押し付けられることである。ミクロに見れば電磁気力相互作用の反発力なのであろう。マクロに見れば常に圧力として作用している。 圧力は点や線で作用することは出来ない。圧力は常に面で作用する。従って、力とは加わった面の圧力の集積である。 現在圧力は面積あたりの力として定義され、圧力の単位Pa(パスカル)が1Nの力を1m2の面積で受けた時の大きさとされている。この定義を逆にすることがより適切なのである。 1Nの力は1m2の面積で1Paの圧力を受けた時の集積である。圧力の単位Paは別途定める必要がある。例えばHeなどの気体1モルが標準状態で単位体積を占めた時の圧力を定めておくことになろう。 (了) 戻る
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