旅行者の誕生日  

(2014年3月3日)


(問題)  

 H旅行者の企画した「8日間イタリアの旅」に参加しました。添乗員のMさんは旅行中に次のように言いました。「今回の参加者は37人です。驚いたことに旅行中に誕生日を迎えられた方が3名おられます。」そう言って3人の名前を告げ、H社からのプレゼントをこの3人に手渡したのです。
 
果たして、37人中の3人が同じ8日間に誕生日を迎えることは本当に珍しいことなのでしょうか。

(検討)

 任意の一人の人がこの旅行期間中に誕生日を迎える確率をpとすると、1年を365日として、
    p=8/365=0.022 
となります。

 誕生日はどの人とも相互に関連はありません。つまり独立ですから、37人集まったとき、誕生日を迎える人の数がm人である確率(分布)は0から37までの2項分布になります。

 n=37、p=0.022 で、m=0、1、2を計算してみると

m=0:P(0)=0.44
m=1:P(1)=0.36
m=2:P(2)=0.15

P(mが3以上)=1−0.44-0.36-0.15=0.05
 (参考:m=3:P(3)=0.039)

 従って、mが3以上の確率は0.05、つまり5%です。

 37人中3人以上がこの旅行期間中に誕生日を迎える確率は5%、20回に1回の割合であります。平均として、20回の旅行を企画したら1回は3人が旅行期間中に誕生日を迎えるということです。

 5%という数字は判断に迷う値です。稀であると言えば稀なような気もしますし、それほど珍しいことでもないと思えばそうかというところでしょう。

 もし、誕生日を迎えた人が4人いたとすると、この確率は1%ぐらい小さくなります。この場合、非常に稀なことが起こったと考えるのではなく、何か原因があったのではないかと考えるべきでしょう。例えば、旅行客の中にはプレゼントを貰うことを狙って、自分の誕生日に合わせて出発日を選んだ人がいたのかも知れません。

 仮説検定論では珍しいことか否かの判断をすることが目的です。ただ、前提として危険域の設定を天下りに行います。もし、危険域を3%と設定していれば、3人は珍しくはないが4人なら珍しいことであると結論できます。危険域をいくつに設定するべきかの根拠は何もないのですから、仮説検定論は判断の気休め論に過ぎないと言えるのではないでしょうか。

(了)


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