等価原理について  

(2012年1月14日)


  実質的に同じことだからということでより解りやすく説いた積もりでも、結果的に間違っているか誤導する結果になることがある。この一例が、アインシュタインが一般相対性原理を確立するにあたって最初に設定したとされる等価原理である。

 重力質量と慣性質量は同じである。これが等価原理である説明している本は多いが、重力質量の概念はもともと不要であった(小野健一:アインシュタインの発想)のだから、アインシュタイン自身が重力質量と慣性質量は同じであるということを等価原理とするとの説明をする筈がないのでる。

 ではアインシュタインが生涯最高のアイデアとして思いついた等価原理はどういう記述だったのであろうか。これには例えば次の本の記載が近いと考えられる。

 「神の素粒子−宇宙創成の謎に迫る究極の加速器」ポール・ハルパーン著、武田正紀訳、日経ナショナルジェオグラフィック社
この本の56頁に次のように書かれている。

 「彼はまず重力加速度が質量に依存しないことから、次のような等価原理を導いた。自由落下状態と静止状態における物理法則は区別できないというものだ。この原理から出発して時空のあらゆる場所における重力をその場所の幾何学的性質と結びつけることに成功した。」

 この表現で、「静止状態」とあるのはひょっとすると訳者の間違いか、或いは著者の表現が説明不足かと思われる。この部分はニュートンの運動の第一法則で表される状態と説明する方が良い。

 物体に力が何も働かないとき、その物体が静止しているときは静止を続け、等速直線運動をしているときは等速直線運動を続けるというのが運動の第一法則で、慣性運動ともいう。

 アインシュタインは自由落下している物体の状態は上記慣性運動の状態と区別できないとしたものである。このことから相対論では自由落下を慣性運動という。{小野健一:反物質は上へ落ちるか,下ね落ちるか」(別冊「数理科学」1995)}

(了)


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